彼の傘は青い

「タイプライターズ」を見てまたしてもわたしの中のアイドルである彼が、同じ思い(だと勝手に思い続けている)彼の中でも死んだので。

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2015.06.27放送「タイプライターズ~物書きの世界~」書き起こし 朝井リョウ最新作『武道館』に関する部分のみ

*鼎談なので基本喋り言葉のまま書き起こしてますが読みやすいように「なんか」「めっちゃ」「すごい」などの品詞は必要に応じて削ってます

*会話内の()は発言者のジェスチャー、またはわたしが勝手に付け足した注なので誤読があったらすみません

*会話は鉤括弧「」、作品名は二重鍵括弧『』、会話内セリフや単語の強調はダブルミュート””、鼎談内での小テーマは墨付き括弧【】で統一しています

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加藤「ということで、『武道館』」

朝井「ありがとうございます」

又吉「読ませていただきました、すごいおもしろかったです」

加藤「おもしろかったですよ」

朝井「本当にすみません」

加藤「(又吉と自分を示しながら)ステージに出るものとしてはもう共感せざるを得ないっていうところが」

又吉「そうですね~」

【新刊『武道館』執筆のキッカケ】

加藤「まずどうしてこう、『武道館』という小説を書こうと思われたんですか?」

朝井「そうですね、えーっと今その現代人を象徴しているモノってなんだろうなって考えたときに出てきたのがアイドルだったんですよ。いろんな映画とかでたまに地球外生命体みたいなのが地球に降りてきてその周りの反応を描くことによってその時代を描くっていう作品があると思うんですよ。今の時代でいうその地球外生命体的なものってアイドルじゃないかと思っていて。(アイドルを)目の前にして申し訳ない」

加藤「いやいやいや、まあまあ」

【アイドルは地球外生命体】

朝井「何しても怒る人っているじゃないですか。アイドルが何しても怒る人もいるし、アイドルが何してもぎゅーんってなる(ときめく)人もいるし。で、かと思ったら今社会学者の方々がアイドルを論じていたりとか、2年くらい前から。アイドルに関する社会学の本とかすごい出ていたり、研究対象にもなってたりとかするっていうことは、いろんな人の、いろんな現代人の何かを反映してる怪物のようなもの気がしたんですよね。かわいくなきゃいけない、若くなきゃいけない、でも恋愛しちゃいけないとか、自撮りで映ったサンダルがすごい高かったらそれはそれでダメとか。応援してるんだけどいい生活はしてほしくないとか」

加藤「ここでそんな裏話バレると僕としては営業妨害なんですよ(笑)」

朝井「そういうなんかその両立できない欲望みたいなものをとにかく叶えなきゃいけない存在として地球外生命体感がやっぱりあったんですよね。本来成り立たない欲望をアイドルだけは成り立たせている」

加藤「宇宙人がアイドルだとしてその周辺を描くとしたらアイドルファンが主人公なのかなって思うんですよ。これ(『武道館』)でいうと主人公がアイドルが好きで(アイドルに)なってっていうところから始まるじゃないですか」

又吉「(加藤の)おっしゃる通りなんですけど、アイドルの物語、アイドルが徐々に成功していく物語なんかなって予備知識がなく読み始めたときに、家族ぐるみの子供の会話が出てきたときにちょっと泣きそうになるんですよ、そうやんな、って」

朝井「そういうことなんですよ」

又吉「そりゃそうなんですけど。この子がアイドルになるんやなって読み始めて思うじゃないですか。その時にあ、そうやん、子供であんねん」

朝井「前後がね、あるんですよ」

又吉「(アイドルがアイドルである)その瞬間しかみてないけど、そうやそうやっていう風になるのが物語のすごいところやなって。僕も(アイドルは)自由でいいやんとは思うけど確かにどっか、自分の好きなアイドルとかが、熱愛発覚!ってなったときにちょっとあるじゃないですか」

加藤「(朝井に対して)いいんですか?その例えば好きなアイドルが恋愛スキャンダルとか出てもそれとは別だってことなんですか?」

朝井「もうね全然良くて、オーディションを受けに来る人ってもう自分は絶対に有名になりたいし自分は絶対表に出る人間なんだっていうのをすごいむき出しにして来てるんですよね。なんかその人間的な部分の方が印象が強くて、あの人たちがだから欲の塊だっていうのは自明のことというか、大前提なんですよね。だから恋愛とかそういう人間的な欲望に司られてる行動をいくらしていたとしても、そこに驚くことはない、そうだよねっていう」

加藤「う~ん、だからそう(アイドルの恋愛を受容する社会に)なっていくといいなって当事者からするとアイドルも人間だってなるのは相当。何年もアイドル文化っていうのがあるのに変わらないってことは何かそこに普遍性があるのかなっては思っちゃいますけど」

朝井「やっぱ読んでくださった方の反応もすごい割れていて、やっぱ議論が起きたことはすごい嬉しいんですよね。自分がどういう考えの人間なんだろうって、本を読んでいて考える時って僕すごい幸せなんですよ。又吉さんの『火花』読んだときはそのキャラクター付けについて書かれている部分がすごい自分的にぐっときて」

加藤「”自分を自分で模している”ってところですかね」

朝井「うん、着ぐるみを被った人間が暑いって思ったらもうそれは違うみたいな。そういう、ごめんなさいねおっきく今言ってしまいましたけども。自分ってあまりこういうこと考えたことなかったなって、自分はどういう考えの人間なんだろうってすごい立ち止まらせてくれるというか、なんか未知のものに出会うってやっぱり、自分の頭の中になかったものに出会う瞬間ってすごい楽しいので。この本(『武道館』)を読んで怒りの感情が湧く人って多いと思うんですけど、そういう人が増えた方がこの本を書いた意味はあるのかなとは思います。」

又吉「怒りの感情が湧くってことはやっぱみんなどっかで(アイドルの恋愛について)わかってるんですよね」

朝井「言わないでよ!みたいな」

又吉「だからえっ?そうだったの?(アイドルって恋愛しているの?)っていう人はあまりいないでしょう、あんまり」

朝井「おそらくその加藤さんみたいに実際に本当にアイドルやられている人からすると、いやそういうことを言わないようにしてきたんだけど!みたいな」

加藤「(笑)」

朝井「そこはすごい申し訳ないなって気持ちも」

加藤「すげー分析されるなっていうなんか、詳しいな~って思いましたけど」

又吉「でもね、サンダルがすごい高価やったらアカンみたいなそれって女性アイドルの方が大きくないですか?」

朝井「そうなんですよ」

又吉「男性アイドルってむちゃくちゃカッコよくて、全部できる万能な人とかも未だにすごく人気やし」

加藤「だから例えば、男性は年取るほどかっこいいって言われがちですけど、女性はもう”劣化”って言葉を使われやすいんですよ。まあひどい言葉だなあと思いますけど。だからこそなにかそこには誰も手に入れられない何か魅力はあるとは思いますね」

朝井「濃度の違いはたしかにちょっとありますよね」

加藤「でも男性も完璧すぎるから人気ってことは比例しないんですね。僕が見てきた経験ですけど。隙がある方が可愛いし」

又吉「なるほど」

加藤「いや完璧なものを見るんだったら日本じゃなくていいんですよ多分。それこそ韓国の人たちの方が今技術がすごいって言われたりだとか、まあマイケル・ジャクソンでいい、みたいな」

朝井「なるほどぉ」

加藤「だから日本人のアイドルを応援するってことは少し…こんな言っていいのかな俺は!後から…」

朝井「いいですよ全然、全部誰か書き起こしますよそれ(カチャカチャ)」

加藤「絶対メモんないでほしいなあ」

又吉「いやでもすっごいアイドルって必要やと思います。今日もロケしててさっき大学出てね、それぞれ3人車乗ったじゃないですか。女性が、学生が追いかけてきてずーっと加藤さんの車を中見えへんのに、車を、ほんと女の子の目をして」

朝井「すごかった」

又吉「僕の車が一番後ろにあったんで、前に加藤さんの車あって、僕のところから見えるんですよみんなが。誰もこっち見てないんですよ、ぼくずっと誰か目合わへんかなと。全員こっち(加藤の乗った車)見て。ほんまに可愛い顔して」

加藤「僕でもすれ違った女性は、又吉可愛い!!って言ってました」

朝井「かわいい」

加藤「誰かにとっても又吉さんはアイドル的存在」

又吉「いやそれ芸人としてはありがたいですけど(笑)でもそういう顔にできるんですよね」

朝井「うん、人を(笑顔にできる)。確かに」

加藤「でもこの(『武道館』)中で、”何が好きかわかんない”っていうセリフがあったんですよね。何がすきなのかわすれてしまった、みたいな」

又吉「一番がわからない、みたいな」

加藤「僕も小学校の時にジャニーズ事務所に入った時も、もちろんちょっと興味はあったけど送ったのは僕本人ではなくて親の友達とかだったんですよ。だったんで入ってるうちに楽しくなってった、やってるうちに楽しくなってった。でダンスやってる友達と一緒にだんだん立ち位置が前に行ったりとか、マイク持たせてもらったり歌うたわさせてもらったりデビューしたり。っていうことをやってるんだけど、その一方でじゃあ楽しいことだけじゃない、じゃないですか。悲しいことも多くって、一生懸命やってるうちに”あれ、俺何が楽しくてここに入ったんだっけ?”って。もう何回か辞めようと思ったことがあったんですけど」(文中セリフ引用→「私、いま、自分が好きなもの、わかんなくなりかけてる」『武道館』127ページ)

【NEWS加藤が『武道館』を読んで重なる点】

加藤「その時はほんと(前述のセリフと)同じようなこと思ってて、何が好きで自分のその最初の初期衝動は何だったんだろうってその時すっごい考えたんですよ。その時結局僕が辿り着いたのは、辞めようと思ったんだけど、辞められなかったんですよね。なんか誰かがこうずーっと足の小指をつまんでるような。それは多分ほんの少しのまだ、希望とか好奇心とか、なんですよね。これを諦めてしまったらもう二度とそれは手に入れられないってその時思ったんで、僕は踏みとどまることができたんですけど」

又吉「芸人みんなでたまに飲んだ時に、あれ?って言って喋るのが、子供の頃から人を楽しませるのがみんな好きで、みんなを笑かす、笑ってる人を見るのが好きやったのに、ほんでそれで芸人になったはずがおもんないって言ってみんなの悪意を増幅させてる瞬間があるじゃないですか(笑)。あれってこれ、どこでどうなっ(てこうなっ)たんかなみたいな」

加藤「笑わせるつもりだったのに、真反対に」

又吉「楽しませる仕事だったはずが、なんかすっごい”おもしろくねーんだよ”とかそのどこでどうなったんやろーって思う瞬間ありますよね。それもちょっと(『武道館』)読んでる時に思ったんすよ。この子はむちゃくちゃ、音楽が鳴ったら踊っちゃうっていう」

朝井「単純に」

又吉「ね、もう天職ですよねアイドル。だけどそれだけじゃアカンというか、世の中が求めてるのはアイドルとしての責任みたいなものも同時に来るっていうね。僕らで言うと面白さも必要っていう(笑)」

加藤「それは絶対必要なんすよ(笑)」

朝井「おもしろさはとりあえずね」

又吉「いや気持ちでなんとかなると思ってたんすよ(笑)だからおもしろさも必要というね」

朝井「わかりやすいおもしろさは必要」

~以後、今後の作家活動についてのお話に続く~

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ね。もう彼個人には何度も殺されているのだけどまたひとつ死んだでしょ。だったらコンサートでも殺してくれないかなあと思うけど、グループにとっての彼と彼個人にとっての彼はまた別の話なんだろうなあ。もう残像ばかり追いかけるのはやめたいね。