生命が「歌」となるきみ

初めて、ジャニーズがiTunes対応してなくてよかったなって思った。どうせパソコンに取り込んでデータにしてイヤホンで聞くんだけど、CDを買うってこういうことよね。歌詞カードがあって、ジャケットが手元にある、安心感と存在感。思い出させてくれてありがとう。

 

 

歌(初回限定盤)(DVD付)

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歌

 

 

渋谷すばる、『歌』。
すべてを削ぎ落としたものがすべてを持っている。あんまり嬉しそうに歌うからつい、顔がほころんでしまう。電車や道端で微笑んでるわたしを見ても許してほしい。あなたも聴いて、微笑んでほしい。笑顔を増やすってこういうことだよ、きっと。

わたしは渋谷すばるのことをすきかと問われると即答は出来ないけど、まあ「うん」とこたえる。多分、それはわたしのすきな男(錦戸亮)が渋谷すばるのことをだいすきだからで、わたしのすきな男がだいすきなものを嫌いとは言えないし、嫌う理由もないからだ。そんなあいまいで迂回的な「すき」でも根幹を揺るがしてくる「歌」がここにはあって、「すき」を肯定してくれる。あいまいでも、不純でも、曲がりくねってても、「すき」は「すき」で「歌」は「歌」だ。

最初から「歌が上手だ」と思っていたのに、どんどんいらないものを削ぎ落として、必要不可欠なものを拾い集めて、技術・感性・美学・興味……たくさんの面を磨き続けて、まだまだまだまだ足んねえぞって気持ちを常に持って、辿り着いたのが、『歌』。

 

多分、全曲作詞作曲:渋谷すばるで完全なオリジナルアルバムを出すことも出来たであろう人が、どうしてカバーアルバムを出すのかを考えていた。

1曲目が スローバラード/RCセクション だからどうしてもわたしは、BankBand(Mr.Children桜井和寿が中心となって活動していたバンド)のアルバム、『沿志奏逢2』を思い出してしまう。
『沿志奏逢』は今まで3作発売されてて、どのアルバムにも桜井和寿が各アルバムのために作った曲が収録されている。
そこだけにある曲。
そのオリジナル曲が、『歌』においては『オモイダマ』のアレンジバージョンなのだろうと強く思う。彼だけが歌う、彼らの曲。

彼は、渋谷すばるは、あくまでも、関ジャニ∞というジャニーズ事務所に所属している、アイドルグループの一員、というポジションであり音楽雑誌やメディアで称されてしまいそうな「アーティスト」ではない、と本人がおもっているからこその様々なはからいなんだろう。
あくまでも、ジャニーズで、グループのメンバーで、グループのための間口を広げるためである。だからみんながずっと知っている曲を、歌う。
オリジナルアーティストのファンの目に止まるかもしれない。どこかでその聴き慣れたメロディーを拾うかもしれない。
個人の技量なのに、行き着く先はグループだ。彼の根にグループがあるから、ちゃんと戻ってくる。彼が放つのはずいぶん大きな、ずいぶんと重たいブーメランなのだ。

 

そんな彼の、そういうところがすきかもしれないな、と自分の「すき」を確立させ得る「歌」。
聞いたことのある曲があるかもしれない。
あなたのすきなアーティストの楽曲が含まれているかもしれない。
あなたの「すき」をまったく別の方向から起こすかもしれない。
あなたの明日を、支えてくれるかもしれない。

今の時代、知らないアイドルの、しかもソロアルバムに2〜3000円出すのは怖いかもしれない。店頭でジャニーズコーナーに近づくことすら、怖いかもしれない。わたしの知ってる曲だけ欲しいから、1曲250円で買わせろって思うかもしれない。
そんな想いを覆す「歌」が『歌』にはある。


「音楽はデジタル化し、コンパクトになって、何千、何万曲と携帯できる時代だけれど、心の中でだけ再生可能な、共に人生を歩んでいける歌はそう多くない。五感を使い、実感を伴って、思いを育ててゆける そんな歌がここにあります。」桜井和寿(沿志奏逢2/BankBand 歌詞カードより)


一生の中の、数あるうちの、ひとつ。
あなたの出会いを無駄にはしない、そんなCDです。ぜひ。